祖父の日記
「あなたの祖父は,とても頭がいい人だった。 この日記,なぜか私が預かっていたんだ。 いい機会だ,これからはあなたが預かってくれないか。」 そんなことを,言われた。 20年程前のことだ。 それ以来,祖父の日記は私の箪笥の中にある。 何度か読んだことがあるが,短歌や詩も綴ってあった。 祖父は,文人でもない。有名人でもない。 戦時中の動員で,大阪で過ごす事もあったようだが, 基本,兵庫県の山奥で生まれ育った人だ。 私には,とても素晴らしい作品をつくることができる友人が存在する。 そのあたりで,賞をもらっている人よりも,素晴らしい作品をだ。 その作品が日の目を見ない。 素晴らしさが人に知られない。 そんな時,ついつい祖父の日記を思い出してしまうのだ。 ただ,それは,私の勝手な感情なのかもしれない。 日記を記していた祖父は,幸せだったのかそうでなかったのか。 誰かに伝えたかったのか,自分の中で完結させたかったのか。 会ったこともない祖父と,日記を介して話していきたい。